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東京インターの坪谷さんが、大切に育てたもうひとつの学校とダイバーシティ

東京インターの坪谷さんが、大切に育てたもうひとつの学校とダイバーシティ

坪谷ニュウエルさんがアジアのインターナショナルスクールで創立された特別支援教育の団体であるSENIAから特別賞を受賞しました。東京インターナショナルスクールと国際バカロレアの推進で著名な坪谷さん。実は、もうひとつのスクールにも力を注いでいました。それがインターナショナル・セカンダリースクール(ISS)です。


社会の変化と多様性を取り込み、進化していくインターナショナルスクール

教育も社会の変化に伴い、求められる教育が変化しています。

インターナショナルスクールもそのひとつで、海外からの駐在員のお子さんのための教育機関でしたが、現在では、帰国生や英語で学ぶ教育ニーズが高まり、プリスクールやキンダーガーデンなど英語で学ぶスクールが増えています。

また、教育の進化と多様性が重なっている分野があります。
そのひとつが特別支援教育です。

今回、東京インターナショナルスクールの創立者の坪谷ニュウエルさんがアジアのインターナショナルスクールで創立された特別支援教育の団体であるSENIAから特別賞を受賞しました。

SEINAは、「発達障害児の通級の教員の基礎定数化の増員」を受賞理由としています。

SEINAは、公式ホームページで「今回の通級の教員の基礎定数化は、日本の特別支援教育にとって大きなポイントとなるのではないか」と指摘しています。

She actively participates and initiates proposals to the National Congress to make education more inclusive. This year, the Japanese government approved funding of 890 teachers for specialized training in the next 10 years, a proposal Bea advocated for. This project is a significant milestone in Japan’s journey towards inclusive education.

坪谷さんは、受賞を受け、次のようにコメントをFaceBookに掲載しました。

2000年にNPO インターナショナルセカンダリースクールを設立し、主として自閉症スペクトラムなどの発達障害や学習障害、いじめなどにあった社会的な問題を抱えた中高校生の小さな学校を運営してまいりました。

今年も41名、19カ国の生徒が元気に通学しております。
生徒たちは、居場所をみつけて学校のことをWe are a big family!!と言ってくれています。
これからもできる事を一つずつ、一生懸命やっていこうと思います。
SENIAの皆様、ありがとうございました。

では、坪谷さんが運営するNPOインターナショナルセカンダリースクールと今回の受賞理由の発達障害児の通級とは?教員の基礎定数化とは?どのようなことでしょうか。

発達障害児の通級とは?教員の基礎定数化とは?

発達障害児の通級とは、ある授業の時間は通級教室で学びます。
そして、クラスに戻ります。

自分の苦手なことに合わせた個別の支援・指導を受けられる少人数の教室が存在します。

通級指導の対象となった子どもは、授業時間割の一部は通常学級を抜けて通級教室に通い、個別の支援・指導を受けることができます。

図形引用:LITARICO発達ナビより

政府は19日、2017年度の公立小中学校の教職員定数を16年度から3282人減らすことを決めた。
発達障害を抱える子供の「通級指導」や外国人児童生徒の指導を担当する教員数について定数を決める制度を変更し、868人増員した。  引用元:日本経済新聞 発達障害など指導手厚く

教員数を一定して増やすことを基礎定数化といいます。
安定し、継続的な通級の仕組みが整えられました。

今回、賞を贈呈したSENIAとは?

SENIA公式ホームページ

2002年にアジアのインターナショナルスクールの特別支援教育の教職員が作った組織です。
現在、日本、中国、タイ、フィリピン、マレーシアなどに支部があり、特別支援教育の指導法など研修会も実施しています。

ちなみに2016年10月には、神戸にあるカネディアン・アカデミイで日本支部の第一回目のカンファレンスが開催されました。

今回、坪谷さんは、SENIAから特別賞を受賞しました。

受賞した坪谷さんといえば

坪谷ニュウエルさんというと国際バカロレア教育でご存知の方も多いのではないでしょうか。

国際バカロレア機構のアジア太平洋の委員を5年に渡り就任し、内閣府教育再生実行会議の委員も歴任された坪谷先生。

東京インターナショナルスクールおよび東京インターナショナルスクールアフタースクールの開校など探究的な学びと英語教育の機会を広めています。

また、著書である『世界で生きるチカラ---国際バカロレアが子どもたちを強くする』(ダイヤモンド社)は、国際バカロレア教育に注目が集まるなかで発行されました。

坪谷さんの特別支援教育への思い

東京インターナショナルスクールの前身となるプリスクールが1994年に開校しています。
1997年には小学部も開校し、現在、中等部まで国際バカロレアのPYPとMYPで学ぶインターナショナルスクールとして発展しています。

東京都港区にある東京インターナショナルスクール。

東京インターナショナルスクールが幼児教育から小学部、そして中等部と発展していくなかで、 坪谷先生が東京インターナショナルスクールとともに育てたスクールがあります。

それがInternational Secondary School(ISS)です。

ISSとはどのようなインターナショナルスクールなのか?

ISSは、特別支援教育のインターナショナルスクールで軽度発達障害など個別指導が必要な中高生のための教育機関としてNPOとして創立されました。

現在、5年生(小学校5年生相当)から12年生(高校3年生相当)まで男女共学のインターナショナルスクールです。

同校の特徴は、多様な生徒ひとりひとりの個性を中高の教育課程で伸ばしていくこと。
また、小さなスクールとして家庭的な雰囲気のなかで生徒の特徴を教職員が把握し、コミュニケーションを積み重ねています。

そのためカリキュラムは、5年生から10年生まではISSのカリキュラムで生徒ひとりひとりに沿った学習を進めていきます。

11年生から12年生(高校2年生から3年生に相当)は、 アメリカのネブラスカ大学のオンライン高校のホームスクーリングの仕組みを活用し、高校の卒業と大学進学資格を取得します。

University of Nebraska High School の公式ホームページ

インターナショナルスクールとして、海外を含め多様な言語、文化の生徒を受け入れるため英語を学ぶEALクラスで英語力を育てています。(English as an Additional Language)
またライフスキルの向上、アウトリーチプログラムも実施されています。

受賞について坪谷先生の声

編集部:SENIAの特別賞受賞おめでとうございます。

また、インタビューを快諾いただきありがとうございます。
受賞理由は「発達障害児の通級の教員の基礎定数化の増員」で「国の特別支援教育をも動かした」ことが受賞の理由のひとつとなりました。
やはりISSの地道な活動の先に国の特別支援教育を変えなければ、という視点があったのでしょうか? また、先生が目指している特別支援教育のあり方がありましたら教えてください。

坪谷先生

ありがとうございます。
私が発達障害を知ったのは、1998年です。
既存のインターナショナルスクールでは、特に大学入学準備コースに入る高校1年生の終わりに、一定の割合の生徒たちが行き場を失ってしまっているという事実があり、その原因を調べた所、発達障害という生徒たちとの出会いがありました。
そこでISSを開校しました。

編集部:現実に困っている生徒さんの姿があったのですね。そのなかでISSはどのような教育を実施していきましたか?

それぞれの生徒は、様々な特徴を持つのですが、一人一人の生徒に対してその特徴に合わせて丁寧に個別の教育をしていくことで16年間、生徒たちはそれぞれの進路を見て受けて巣立って行きます。

しかしその生徒たちも、もし大人数の生徒数のいるクラスで皆のペースに合わせて学習をしていたらそうはいかなったのかもしれません。

編集部:そうですね。クラスのなかでつぶされてしまう生徒も出てきてしまいます。今回の受賞理由になっている通級制度ですが、どのような目的で導入され、生徒にとって人生にどのような影響があるのでしょうか?また、現実にどのくらいの生徒が発達障害をかかえているのでしょうか?

人生は100年時代を迎えるといいます。

その間の学生の間に生徒1人ずつに合った教育を提供する事で、その生徒の残りの80年間はより本人にとってもより生き甲斐を感じる人生を送る事ができ、社会にとっても貢献する人材になっていくと確信しています。

よって日本に63万人いると言われている発達障害の生徒たちにもっと個別の授業(通級の授業)を充実させる事は大変重要と考えました。

編集部:63万人の生徒さんがいるのですね。そのなかで、現在の学校教育の現状と課題を教えてください。

政府の主導で、各公立の学校に特別支援の教員の担当の教員を置くようになっていましたが、実態を調べた所、それらの先生方はほとんどの先生が担任のクラスを持っていました。

40人学級の生徒たちの指導をしながら、学校中の発達障害の生徒のケアをすることはどう考えても無理だと思いました。

編集部:担任として普段でも忙しいなか、さらにひとりひとりを見ていくのは現実的に難しいですね。そこで通級教員の先生の基礎定数化で解決を目指したのですね。

色々な皆さんや、先生方のご協力を仰ぎながら通級教員の基礎定数化の増員が閣議決定したことは大変嬉しく思います。

しかしこれはまだまだ最初に一歩にすぎません。

発達障害の生徒のみならず、小中高校では18万人の不登校児がおり、6人に1人の生徒は貧困家庭、小学生の13.4%の生徒は授業が簡単すぎてつまならいと言い、15%は授業が難しすぎてわからないと言っています。

日本は先進国の中で、極めてGDPに対して教育にかける予算が最低レベルの国です。

少子化だからこそ、一人一人の生徒にきちんと対応した教育を提供して行かなければいけないと私は思います。

編集部:OECDの統計でも、日本の教育にかける費用が指摘されていました。

その為には、子がいる人も,いない人も、子育て前の人も、子育て中の人も、子育てが終わった人も、教育こそ未来への投資と考え、教育に対して私たちの血税を使ってもらいたいと声をあげていけたらと思います。

なぜならISSの生徒たちを見てきてはっきりわかったことは、教育は子どもを変えるチカラがあるという事です。

子どもたちは私たちの未来。つまり教育は未来を変えるチカラがあると言えるのではないでしょうか。

編集部:ISSの取り組みもそうですが、教育が変われば、国を作る人材も変わり、結果的に中長期的に国として大きくステップアップすることができると思います。

世界が大きく変化するなかで、今のうちに教育を変えることで結果的に大きな柔軟性であったり、課題を解決する仕組みができそうですね。

編集部:ISSについてお聞かせください。

今回、国として政策が変わるように動いたわけですが、坪谷先生は、実際に生徒さんや保護者の方が学び続けたいと悩み、困っているなかでISSを運営しています。

そもそも坪谷先生がISSを創立されたきっかけを教えてください。

坪谷先生

インターナショナルスクールを経営して行った所、インターナショナルスクールでは高校1年生の終わりで一定数の生徒が行き場がなくなることがわかりました。

その原因を追及してみた所、発達障害や学習障害という問題を抱えていた事がわかりました。

3分の2の生徒は、日本語もままならず行き場がない状態でしたし、日本国籍の生徒もその年齢迄インターナショナルスクールに通学していたので、日本の一条校への転校は難しい状況でした。

編集部:まさに行き場がなくなってしまっていたのですね。16歳前後で社会に自分が学ぶ場所がない、というのはきついですね。

日本に住んでいるからという理由で子どもたちが通学できる学校がないということはおかしいと思い、最初は高校2年生からの受け入れから始まりました。

今では小学校5年生からの生徒が来ております。
通学していた学校からの紹介で入学して来る生徒も多数おります。

編集部:スクール側も学び方や将来をどうするべきか、困っている生徒の未来をISSにお願いしているのですね。スクール間の信頼があるからこそですね。

編集部:同校はダイバーシティという言葉がふさわしいスクールです。

坪谷先生が実際に同校の教育を通して多様性を感じた瞬間やエピソードがありましたら教えてください。

坪谷先生

学校に来ている間は、ずっと寝てしまっている生徒がいました。
しかしその生徒は絵を書くのが好きだったのです。
その生徒は学校中のポスター等のイラストを描く係りになってからは蘇りました。
今はイラストの専門学校に行っています。

編集部:進学先にアート系の学校名がありますが、才能を活かせ進路の例ですね。

授業中、背中が壁についていないと安心できない生徒もいます。
どのクラスでも彼は壁を背にして学習しています。

また、アスペルガーの生徒で、ジョンホプキンズ大学の医学部に進学した生徒がいます。

彼が卒業式の時の挨拶で「日本に転校してきた時に僕を受け入れてくれる学校はどこなもかった。ISSがあったから僕の将来の道は開けた」とスピーチをしてくれた時は涙がでてしまいました。

編集部:生徒に寄り添って、将来を一緒に探していく。本当にISSならではですね。坪谷先生、お忙しいところコメントをいただき、ありがとうございました!

名門大学に合格するISSの凄さ

ISSのすごさ。
それは、進学先の国数とやはり大学名です。

国内では上智、早稲田大学などトップ大学をはじめ、イギリスのマンチェスター大学、ダラム大学 、アメリカのボストン大学、ジョージ・ワシントン大学、ニューヨーク大学、南カリフォルニア大学、バークリー音楽学院をはじめカナダ、オーストラリア、シンガポール、タイ、スウェーデン、デンマークなど幅広いのも特徴です。

ISSは、少人数で家庭的な雰囲気のスクールなので、生徒の特徴を理解した先生と一緒に進路を選べ、学ぶことで結果的にいわゆる名門大学に進学しているのだと思います。

また、この背景には大学の入学制度もありそうです。
筆記式試験で決まるだけではなく、在学中の成績表や取り組んできたこと。何をどのように学びたいのか?をきっちり考えて入学後も学び続ける学生を選ぶ選考方法がある大学の姿が見えてきます。

編集部の気持ち

インターナショナルスクールというと国際エリート教育という側面が強いのですが、ISSはインターナショナルスクールとして多様な生徒が学ぶ機会を提供しています。

近年、国内では発達支援の教室運営のLITALICOなどが上場し、発達障害の理解も急速に展開しています。

今回の坪谷先生の受賞は、国に特別支援教育の仕組みを変えさせたことが受賞理由の中心ですが、編集部は、坪谷先生がISSを通して、特別支援教育の国際教育のインフラとしてきたことにも注目しています。

海外からの駐在員や帰国生が日本の特別支援学校に入ることは、言語的、文化的にも難しいのが現実です。
そのなかでISSが果たしてきた役割は、「学びたい」という生徒と「学ぶ機会を」という学びの原点の提供です。

海外からの転勤などISSでしか学べない生徒がいます。そのためにNPOとして活動する同校は、重要な国際教育機関です。
*なお、同校の入学対象は、多国籍な生徒と保護者が対象となっています。

お問い合わせ

International Secondary School
住所:〒152-0002 東京都目黒区目黒本町3-18-16
Mail:[email protected]
Tel:03-6894-0055
Fax:03-6894-0056

International Secondary School

http://www.isstokyo.com

At International Secondary School, we believe that every student is a unique individual. We strive to assist students in developing their learning strengths.

こちらも参考にしたいですね。

インターナショナルスクールの「トリセツ」〜7分30秒で丸わかり〜

http://istimes.net/articles/805

インターナショナルスクールとはどんな学校なのか?どのように学ぶのか?どのような生徒が通っているのか?また、どのような保護者が通わせているのか?などインターナショナルスクールについて取材を通してまとめました。乳幼児が通うプリスクールではなくインターナショナルスクールについてのまとめです。

3分で知る!国際バカロレア

http://istimes.net/articles/667

「世界で使える大学志願資格」国際バカロレア(International Baccalaureate)とは、世界中を転勤する家庭の子どもが、大学に進学できるように国際的に認められる大学志願資格を作ろう!という動きから生まれました。世界的な転勤族の子どもの教育を考えて生まれたと考えるとわかりやすいですね。

インターナショナルスクール卒業生は、この3つタイプに進学していく!

http://istimes.net/articles/827

インターナショナルスクールに通う日本人の生徒は、本当のところどのような大学に進学しているのでしょうか?調べてみました。するとインターナショナルスクールに通う日本人の進学先は、大きく3タイプに分けられるようです。

3つの特徴がある!インターナショナルスクールに通っている生徒の特徴とは?

http://istimes.net/articles/820

インターナショナルスクールってどんな生徒が通っていると思いますか?実は、インターナショナルスクールに通う生徒には3つの特徴があります。1.多国籍。最近はアジア系の生徒が増えています。2.親の仕事の関係で、編入学・転校も多い。3.小さい頃から海外経験が豊富な生徒が多い。の3つです。

この記事の記者

インターナショナルスクールタイムズの編集長として、執筆しながら国際教育評論家として、NHK、日本経済新聞やフジテレビ ホンマでっかTV、東洋経済、プレジデント、日本テレビ、TOKYO FMなど各メディアにコメント及びインタビューが掲載されています。

プリスクールの元経営者であり、都内の幼小中の教育課程のあるインターナショナルスクールの共同オーナーの一人です。

国際バカロレア候補校のインターナショナルスクールの共同オーナーのため国際バカロレアの教員向けPYPの研修を修了しています。

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